2009年3月25日水曜日

起鑽落翻(武術なお話)

今回はマニアックな所のお話。

俺がやってる孫家拳には太極拳、形意拳、八卦掌とあるとは前回の日記で書いた通りだけど、俺自身はその三つ全部はやっているとは言え、今一番やっているのは形意拳という武術。

これは単純に形意拳の技の一種類である十二形拳という物を習っている最中で、先生にはせっかくだから形意拳を重点的にやったほうがいいよ、というお勧めもあってそうしているのね。

形意拳には厳密な套路、つまり型がなくて基本技五つからなる五行拳、十二種類の獣をモチーフにした十二形拳、五行拳の応用である套路、五行連環拳とかそこからまたいろいろな技、套路に発展して行く。
まぁ、ウチの流派の中では一番技が多いので覚えるのも大変という事なんだけど(笑)。

ただ、この形意拳の基本はすべて五行拳に集約されると思っている。五行拳の内容はその名の通り、五行の属性を模して種類分けされ、

木の崩拳
火の炮拳
土の横拳
金の劈拳
水の鑽拳

の五個になる。

そのうち、俺が一番最初に習い、一番気に入っているのが金の劈拳。
これは前に出している手を拳に変えて突き出してから、その手に添う様に後ろ側の手で掌打を繰り出しながら体を入れ替えて進むというもので、打ち出すときに重心は後ろにして、体の転換の推進力と重心を落とす力で威力を出すというもの。

昔、空手をやっていたり、現代格闘技から入ったのでこの重心を後ろにしたまま、というのが中々なじめなくてずいぶん苦労したのもいい思い出だったりする(まぁ、今でも苦労してるけど)。
ところがこれが慣れて来ると、中々楽しい技だったりするのだ。
一見地味なのだけど、複雑な体の使い方を求められ、なれて行く毎に新しい発見がある。
これはどの技や、あるいは太極拳、八卦掌でも同じなのだけど、明白に自分の中で理論として考えられるようになったのがこの劈拳からだったので、ずいぶん印象に強いのもあるのだと思う。

で、ここからがタイトルの内容の話。

この劈拳ってのに注意事項、つまり要訣という奴の一つに

『起鑽落翻』

という言葉がある。

これは技が始まるときには鑽、つまり回転しながら突き出して、手が落ちるときにはその拳が翻る、という意味になる(ハズ。違ってたらスイマセン先生)。
これは劈拳の最初の段階、つまり前側の手を拳にして突き出しながら打ち込み(起鑽)、体を転換させるときにその前の拳が翻って掌になりながら自分の腹の前に落ちる(落翻)という、打撃における引き手の重要性なのかと思っていた。

引き手というのは大事で、特にこの技のように一度打撃を繰り出してから、相手の手を掴んで引き込むような動作だったりするとこの一手が崩しになるわけで、あいまいにやるとまったく技が通じなくなるし、そうでなくても前に出しいる手をすばやく引く力によって、後ろから突き出されていく別の手の威力と速度が速くなるというのはどの格闘技でも周知の事実。

なので最近まではその部分を強く意識して、練習していたのだ。


それがある日、教室の仲間達(青砥の時なので、生徒さんたちなわけだけど)といわゆる現代格闘技(ボクシングとか、フルコンとかね)とかだと、中国武術的なお約束が通じないから、ある程度考えないと遊ぶ事すら大変だよ、というお話をしていた時の事。

余興で相手のジャブを定歩、つまり前進しないで前の手だけで打つという形の劈拳の応用でカウンターをとって見る、という事を試して見せた時に突然思いついたのだ。

起鑽落翻というのは、別に前の手とかそういう物ではなくてこの技全部に通じる部分なのだと。

まぁ、しっかりやってる人とか、長年やってる人は何をいまさらー、な話題なのだろうけど(笑)。

拳を回転させながら突き出すと、掌は上に向きながら突き出されていく。この螺旋の力で相手から打ち込まれた打撃をはじきながら攻撃する、あるいはブロックするのがこの動きの理屈だが、同時にそのまま手を開きつつ、掌打を少し上から切り落とすように打ち込むためには、きちんと手が翻りながら落ちなければいけない。そうでなければただの突っ張りになってしまって、腕力だけしか生かせない事になる。

また、これが定歩ではない場合でも同じ事で、前に出した手をレールにするようにそって一定ラインまでは後ろ側の手も拳になったままつきあがっていくのだから、その後に翻りつつ落とす力を使わなければ同じ事になる。
それに拳の状態で前手に添わせることで相手に攻撃のタイミングを掴ませにくくする事もできるのだから、やはり重要なのではないかと。

もちろん、腕だけ、この部分だけの問題ではないから、五行拳以前に学ぶ基礎練習の三体式等でしっかりと体勢が作れるようになって、いつでもその体勢を体の内部で作れなければお話にならないんだけどね。それが中々難しい(笑)。

まぁ、そんなわけで最近のテーマの一つにこの起鑽落翻というのがありますよ、というだけのお話。

ふふふふ、長いのでここまできちんと見た奴はそーはおるまいッ(笑)。

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